APECSS Newsletter 2019 Jan ed release

2009年から編集に加わった APECSS Newsletter も配信年2回のペースを途中達成できなかったときもあったが、とぎれることなく続いてきた。当初は、Bronwen と私の二人体制、途中 Bronwen から David へオーストラリア側のエディタが交代したが、結局体制の変化によって、単独編集になった。また、当初はワープロで作成 PDF を配信という方法から、TeX での編集へと切り替えてみたが、データの再利用と版組の自由度から、ワープロ編集にもどしファイル内リンクを作成する方法に変更。
現在は定期的に AIEP President である Prof. Theo de Bruyn から情報が転送されてくるので、それを随時単独のメールメッセージとして配信するとともに、Newsletter 編集時にそれらの情報も加味した上で配信し、その後にはデータを Theo にもどして、AIEP のウェブサイトに情報転載という仕組みができあがった。さらに、APECSS のウェブサイトが Geoff によって作成されたので、バックナンバーをアップロードすることができるようになった。ここまで体制がととのったので、あとは私のあとを引き継いで編集に携わってくれるつぎのエディタをさがすことが今後の課題。

Workshop @ Weobley, Herefordshire

2018年3月末からイースターにかけて英国滞在、ウェールズにちかい田園の古民家に滞在、ワークショップに参加するという貴重な機会を提供された。ワークショップに先立って Corpus Christi College に滞在、翌日アンナの運転で Weobley の民家を目指して移動、夕刻民家に到着。その日から3泊してワークショップ、アウグスティヌスの『秩序について』De ordine について、5人で集中討議を午前と午後の部に分けて行なった。また、2日目の午後には、つぎのタイトルで簡単な発表を行なった。

  • N. Kamimura, “Augustine’s De ordine Revisited,” An interdisciplinary 4-day workshop on the theme “Augustine’s De Ordine: Philosophical, Historical and Theological Perspectives,” organised by Dr Anna Marmodoro, The Throne, Weobley, Herefordshire, England UK, 26–29 March 2018

2018 Workshop
2018 Workshop
Corpus Christi のなかの部屋は快適でしたが、ワークショップ終了後に滞在した Beam Hall のほうは ensuite でなく、だいぶ古めかしいものでした。部屋のなかで作業に集中しているぶんには問題ないのですが、資料調査の期間ぐらいが妥当なのでしょう。
2018 Workshop
2018 Workshop
イングランドの田舎に滞在するという経験はまたとないものでした。古民家は床がぎしぎしと音を立て、大ぶりの材木で組まれた居室は趣にあふれ、夕刻になるとおとずれた食堂ではビールとラムを堪能。3月下旬だったのでまだ肌寒さをおぼえ、暖炉ではひたすら薪を燃やしつづけながら、アウグスティヌスのテクストについて議論をするとは、まさにカッシキアクムを追体験するようにも思えました。最後の夜にはみなでニールが持参したボードゲームに興じました。
2018 Workshop
2018 Workshop
早朝の散策で訪れた Woebley の村外れの古い教会も静謐ななか素敵なたたずまいでしたが、オクスフォードにもどるにあたって立ち寄った Herefordshire Cathedral Library や、Roman villa もすばらしいものでした。ヘレフォード大聖堂の図書室では、はじめて鎖につながれて棚に並んだ古刊本を見学し、アウグスティヌスの Amerbach edition を発見しました。また、大聖堂の Mappa Mundi も詳細に眺めました。さらに、発掘された Roman villa では、カッシキアクムに参加した人々が集った浴場の実態がどのようなものだったのか、それを彷彿とさせる発掘跡を見学し、水利施設をふくめ当時の技術をじっくりと鑑賞しました。イースターのさなかのオクスフォードでは、一日教会の鐘が鳴り響いていました。

Conference talk @ Canterbury UK

英国カンタベリーの大聖堂隣接のカンタベリー・カテドラル・ロッジにおいて開かれた国際研究集会 Ancient Thought from a Global Perspective: Human Freedom and Dignity (26-28 February) において、研究成果を発表しました。学会最終日のセッションにおいて話した論文のタイトルは、つぎのとおりです。

  • N. Kamimura, ‘The reception and (dis-)assimilation of patristic literature in early modern Japan,’ International Conference ‘Ancient Thought from a Global Perspective: Human Freedom and Dignity’, Canterbury Cathedral Lodge, Canterbury, UK: 25 February–1 March 2017.

Canterbury 2017
Canterbury 2017
学会オーガナイザの Prof. Karla Pollmann の招待によって、カンタベリー大聖堂のすぐ南にあるロッジで開かれた研究集会、あわせて学会前日に開かれた Post-Doctoral Fellow 主体のセミナーに参加し、また小規模のあつまりであったこともあり、濃密な議論の空間を享受することができました。EU ベースのプロジェクトに参加した人々は、英国、デンマーク、ロシア、ドイツ、イタリア、スペイン、ブラジル、チェコ、ハンガリー、日本、と多国籍で、今日のヨーロッパを中心とした人文学の交流の一端を覗くことができました。
Canterbury 2017
Canterbury 2017
初日午前に近くのアウグスティヌス修道院跡を訪ねることができたのも幸運でした。ハイシーズンでなかったので、土日しか空いてないということでした。2日目午後には、大聖堂のアーカイヴと図書館に案内されて、アルキヴィストの Mrs Cressida Williams による特別講義を受けました。古刊本修復の現場に立ち合って、この地において「雁皮」という言葉が発せられる場面に出くわしたのは一興でした。
発表した論文について刊行予定の論文集への投稿を誘われたのはよかったですが、なによりも議論のなかで今後検討すべき課題について有益な示唆を受けとることができたのがこの学会参加の収穫であったと言えるでしょう。

Conference talk @ Malta

マルタ共和国サンポールズ・ベイのホテルで開かれた Ministerium Sermonis III. An International Colloquium on North African Patristic Sermons において、研究成果を発表しました。学会最終日のセッション5にて、Prof. Anthony Dupont (KU Leuven) の司会のもとで話した論文のタイトルは、つぎのとおりです。

  • N. Kamimura, ‘Christian and/or Pagan Identities and Their Relationship with the Spiritual Exercise in the Sermons of Augustine,’ Ministerium Sermonis III. An International Colloquium on North African Patristic Sermons, Augustinian Historical Institute, Malta: 8–10 April 2015.

Mosta 2015
Malta 2015

三日間にわたって開かれた学会において、この領域における著名な研究者にはじめて会うことができました。事前のプログラムから何人かのキャンセルが出ていたので、オーガナイザも大変だったと思いますが、イェールの Paul Kolbet、シカゴの Leslie Dossey、フランスからは Françoic Dolbeau, Isabelle Bochet、ウィーンからは Clemens Weidmann、ルーヴァンからは Dupont と Mathijs Lamberigts、また、若手の研究者の発表もそれぞれ非常によく準備されたもので、大変に刺激的な集まりでした。この学会での成果は、Brepols からの論文集として出版される予定なので、秋までに発表稿をさらに修正、加筆して無事投稿にこぎつけたいと考えています。

3月頭からの3連続の学会発表も今回で一区切り。はじめて訪れたマルタの地は魅力にあふれていました。ヴァレッタは通過しただけでしたが、サンポールズの港町はこじんまりとして、町中の散策も楽しみ、海辺のレストランでは地元の海産をつかったおすすめ料理を味わいました。エクスカージョンで訪れたモスタの大聖堂もすばらしく、博物館の地下のカタコンベと防空壕案内ツアーではこの島の歴史について、ガイドから色々教えられました。カンファレンスディナーの最後には、地元の民族衣装を着た踊り子たちの踊りが披露され、すすめられて一緒に踊り出した研究者のひとりは、「ボスには言うなよ」と叫びながら、華麗なステップを披露。

Conference talk @ Sydney

シドニーの St Andrew’s Greek Orthodox Theological College で開かれた St Andrew’s Patristic Symposium 2014: From Alexandria to Cappadocia and Back Again (26-27 September) において、研究代表者が研究成果を発表しました。学会初日 (September 26) のセッションにおいて、Adam Cooper (John Paul II Institute for Marriage and Family) の司会のもとで話した論文のタイトルは、以下の通りです。

  • N. Kamimura, ‘Spiritual Itinerary of the Soul to God in Gregory of Nyssa and Augustine’, St Andrew’s Patristic Symposium 2014, St Andrew’s Greek Orthodox Theological College, Sydney, NSW: 26-27 September 2014.

この学会においてはじめて東方教父のテキストを分析、検討した成果を発表しました。この発表を踏まえて、Theological College の雑誌 Phronema への投稿を準備したいと考えています。また、次回 2016年の9月に開かれる研究集会の統一テーマがすでに personality and contributions of Saint John Chrysostom と決まっているので、その準備もすすめるつもりです。

この学会にははじめて参加したのですが、同じく初参加の台湾からの研究者との会期中の交流を通して、今後の研究交流の可能性が開けてきました。まずは、2015年に台湾の雑誌において特集を企画しているテーマへの投稿を依頼されたので、この研究プロジェクトに関係するテーマにて論文を執筆する予定です。また、日本の教父研究会と台湾の研究機関との相互交流についても、今後の課題として検討してみたいと思います。

Sydney 2014
Sydney 2014
Sydney 2014

学会が終了しフライトまで時間があったので、夕方までシドニー市街を散策しました。左の写真はそのときに撮ったものです。夕方になってキングスフォードスミス空港に向かい、カウンターに到着したところいつもとは違う様子に気づいて話を聞くと、日本国内で火山の噴火が発生したのでカンタスのフライトがすべてキャンセルになったということでした。御嶽での被害についてその時点では分からなかったのですが、市内のホテルがクリケットのイベントですべてふさがっているので急遽友人に連絡をいれ、一泊お世話になりました。翌朝フィッシュマーケットにて新鮮な牡蠣を堪能できたのはよかったのですが、よもや登山中にそれほどの悲劇が起こっているとは想像できませんでした。

Conference talk @ Yokohama

横浜の東洋英和女学院大学で開かれた「アジア環太平洋初期キリスト教学会」第9回研究集会 (4-6 September) において、研究代表者が研究成果を発表しました。学会三日目 (September 6) のセッション 6B Augustine II において、出村和彦教授(岡山大学)の司会のもとで話した論文のタイトルは、以下の通りです。

  • N. Kamimura, ‘Christian and/or Pagan Identities in the Sermons of Augustine’, Asia-Pacific Early Christian Studies Society 9th Conference, Toyo Eiwa University, Yokohama: 4–6 September 2014.

APECSS 2014
Kamakura 2014

2003年にオクスフォードで開かれた XIV. ICPS での集まりを機縁としてはじまったアジア環太平洋地域の初期キリスト教学、古代末期研究を専門とする研究者の相互交流も、今年で10周年を迎えるまでになりました。いまでは、メーリングリストに加わっている研究者もゆうに150人を超え、オーストラリアと日本の研究者を核にして、南アフリカ、アメリカ、ロシア、香港、韓国、フィリピンからの研究者のみならず、遠くドイツ、デンマーク、リトアニアやフィンランドからも研究集会へと人々が参加するまでに成長しました。

宿泊を中華街もよりの勧められていたホテルにとったところ、なぜか私以外はすべて海外勢。仙台 APECSS のときとおなじく、またもよく知らない街での会食案内、さいわい中華街をよく知る友人におすすめ場所(華都飯店)を急遽教えてもらってなんとかなった。学会が終った夜には友人と食事に行くことになって、Geoff に何か希望は、と尋ねると中華以外なら何でもよいとの返答、さすがに飽きたようで、和食の居酒屋で友人4人で盛りあがりました。

学会後には、はじめて日本にやって来て周遊していた Claudia 姉妹を自宅に招いて会食、その翌日は鎌倉まで足を伸ばしました。小町で昼食をとった時にとなりに居合わせた観光客と話がはずみ、どこから来たのか聞くとバルセロナからと答えたので、スペインですかと応じたら、一団が一緒になって「カタルーニャ!!!」と叫び、席をはずしていた Claudia と同じ問答をまた繰り返していました。まさに、独立投票の時期であったと思い出した次第。

Conference talk @ Chicago

アメリカ・シカゴの Hyatt Regency Chicago (これまでの Holiday Inn Mart Plaza から会場移動)で開かれた「北米教父学会」年次集会 (22-24 May) において、研究成果を発表しました。学会初日 (May 22) 夕方のセッション18 Transformation through paideia and Ritual において、Prof. Dennis Trout (University of Missouri) の司会のもとで話した論文のタイトルは、以下のとおりです。

  • N. Kamimura, ‘The Basis for Christian Identity: “Spiritual Exercises” in the North African Church AD 250–320’, North American Patristic Society 2014 Annual Meeting, Hyatt Regency Chicago, Chicago, Ill.: 22–24 May 2014.

NAPS 2014

当日の会場で配布した論文原稿をあとになって入手した在ベルギーの研究者から、帰国後にメールを受け取り、その後のやりとりを通して、あたらしい研究交流の可能性を検討することになりました。まずは、2015年8月にオクスフォードで開かれる国際教父学会に申し込む予定の北アフリカのキリスト教思想の展開を主題とするワークショップへの参加を誘われたので、現在その準備に着手したところ。

Seminar talk @ Brisbane

2011年3月3日に、オーストラリア・ブリスベンの ACU CECS において、オーストラリアの研究チームとの共同セミナー Joint Japanese-Australian Seminar on Crisis in Late Antiquity を開き、科研費の成果として発表をおこないました。セミナーにおける発表のタイトルはつぎのとおりです。

  • K. Demura, ‘Augustine’s heart-centered anthropology and the psychological reconfiguration of the community dealing with poverty’.
  • N. Kamimura, ‘Augustine’s Spiritualisation of the Poor in an Era of Crisis’.
  • P. Allen, ‘Crisis in the letters versus the Hymns of Severus of Antioch’.
  • B. Neil, ‘Crisis in the Libri Pontificales of Rome and Ravenna’.

Brisbane 2011
私の発表は、すでに発表をすることが決まっている 2019 International Medieval Congress @ Leeds の前哨戦というかたちで、貧困に関するアウグスティヌスの言説の基本動向をまとめたかたちになりました。科研費プロジェクトも最終年度にはいるので、これまでの成果をまとめるための準備にとりかからなくてはなりません。

Seminar talk @ Brisbane

Prayer and Spirituality in the Early Church 第6回国際学会にさきだって ACU Centre for Early Christian Studies において開かれた annual meeting に参加,継続中の科研費「転換期における「貧困」に関するアウグスティヌスの洞察と実践の研究」についての短い報告を行ないました。

  • N. Kamimura, ‘Research Report: Augustine’s Understanding and the Practice of Poverty in an Era of Crisis’, Annual Meeting of the Centre for Early Christian Studies, Australian Catholic University, Melbourne, VIC, 7 July 2010.

ミーティングでは,センターの2003年以降の研究活動の実績(論文公刊の点数とその評価など)が報告されるとともに、APECSS の2011年以降の予定について,現在確定済みのスケジュールが紹介されました。

APECSS Newsletter

2003年オクスフォードの 14th ICPS をきっかけにはじまった Western Pacific Rim Patristics Society (WPRPS) は、通例の学会とはことなり、会員同士の個人的なつながりをベースにしていて、翌年2004年から年1回の学会を開くようになったが、会員同士の交流のベースとして e-Newsletter を会員メーリングリスト向けに流す試みもつづけてきた。当初は、オーストラリアの Dr Bronwen Neil が編集を担当していたのだが、この2009年11月から私も編集に加わることになり、年2回の発行を目指すことになった。情報を集めるのに少々手間がかかるとはいえ、重要な媒体として Newsletter 編集に力を注いでいきたいと思う。